「熱処理の概要について知りたい」
「熱処理の目的を知って理解を深めたい」
「熱処理にはどのような種類があるのだろう」
このようにお考えの方はいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、熱処理の概要と、目的、種類について詳しく解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
□熱処理に概要について
金属材料に熱を加えて冷却し性質を変化させることを熱処理と言います。
そして、加える熱の温度や保持時間、冷却方法を変化させて様々な組織の変化を引き出します。
では、なぜ熱処理で金属が硬くなるのか、その概要について詳しく解説します。
金属、いわゆる炭素鋼は柔らかい純鉄部分と硬い鉄と炭素の化合物の結晶でできています。
これらが混ざり合った状態から800度以上で加熱すると、オーステナイトという金属組織に変化します。
そして、炭素の均一化が進みます。
ここから、ゆっくりと冷却すると再び結晶化して組織が均質化するため軟らかさを付加したり、機械的性質を向上させられたりします。
また、加熱しオーステナイト化した金属組織を急速に冷却後、マルテンサイトに変態します。
そして、炭素部分の分布が均一のまま硬化させられますが、マルテンサイトのままでは硬く脆いです。
それゆえ、再び加熱し冷却することで組織を安定させられます。
焼入れによる硬さは、材質の焼入れ性、冷却速度、炭素含有量などで決定されます。
□熱処理の目的とは?
ここまでは熱処理の概要についてお話ししました。
ご理解いただけたと思います。
続いては、熱処理の目的について3つ解説します。
目的を正しく理解して、熱処理の必要性について理解してください。
まず1つ目は、硬くすることです。
熱処理を施すことで、金属の強度や耐摩耗性を高められます。
2つ目は、残留応力の除去です。
金属は加工や熱処理で、部分的に強い力がかかります。
そして、膨張収縮の方向やスピードの違いで内部に応力が残留した状態になる場合があります。
熱処理でこの残留応力を除去できます。
3つ目は、調質です。
金属は、結晶状態や粒度、化合物の分布状態で、様々な組織形態を示します。
その組織形態で、機械的性質が異なったり、不安定になったりします。
狙いとする機械的性能を得ることが大切です。
それゆえ、金属組織の形態を変化させたり、調質させたりすることがこの調質の役割となっています。
以上の3つが熱処理の目的でした。
熱処理はこのような狙いを達成するために実施します。
次の章では、これらの狙いと特徴に応じた品質管理として熱処理の種類について解説します。
□熱処理にはどのような種類がある?4種類の熱処理をご紹介!
ここでは、熱処理の4つの種類について特徴とともに解説します。
ぜひチェックしてみてください。
*焼入れ
金属に高熱を加えて高温状態にして急冷して硬化させる熱処理のことを焼入れと言います。
金属の中でも主に鋼に対して施されます。
鋼はもともとはフェライトやパーライトなどの比較的柔らかく粘り気のある組織で形成されています。
熱した際に、一定温度を超えると鉄、炭素、微量元素が溶け合って均一に混ざり合います。
そして、オーステナイト変態と呼ばれる現象が生じ、再び時間をかけて冷却後に、フェライト変態し元に戻ります。
しかし、急冷するとフェライトになりきれません。
そして、ルテンサイト変態を起こします。
その組織は非常に硬い性質を持っています。
この一連の流れと硬さを利用した技術が焼入れということを把握しておいてください。
*焼きもどし
焼入れによって鋼の組織はマルテンサイト化して硬くなるでしょう。
そのままではもろく、割れなどが生じやすい状態です。
「焼もどし」とはその状態から、さらに再加熱して硬さを調整して粘りや強靭性を高める作業になります。
英語ではテンパリングと呼ばれ、JISの加工記号では「HT」と記載されます。
基本的に焼入れと焼もどしはワンセットで行います。
そして、硬くて丈夫な製品づくりに生かします。
もし、焼入れだけで作られた工具や部品があった場合は、すぐに破損したり傷が付いたりして使い物にならない可能性があります。
*焼なまし
焼入れとは反対の作業になります。
鋼を柔らかく加工しやすくしたり、加工などの影響で硬くなってしまった組織を柔らかくしたりするために行うのが、焼なましです。
加熱で部品内部の組織を、均一化したり、尖っている組織に丸みをもたせたりします。
焼きなましにはいくつかの種類があります。
その種類と鋼の組織によって求められる温度は550℃程度から950℃近くと幅があるのが特徴です。
どの場合でも、加熱して1時間程度温度を保持した後、炉内でゆっくりと冷却していきます。
*焼きならし
焼きならしは、主に鉄鋼材料の製造段階で発生した不均衡な鉄の組織を均一化させて、その後の切削加工やプレス加工などに適した状態に整えるために実施します。
また、鉄を800℃〜900℃に加熱して、その後空冷します。
JIS記号ではHNRと記載します。
□まとめ
今回は、熱処理の概要と、目的、種類について詳しく解説しました。
熱処理は硬くしたり、残留応力を除去したりするためにするものです。
また、解説した4つの熱処理の種類について押さえておきましょう。
メンテナンス等でお悩みの方は、ぜひご相談ください。