工場では、粉じん・騒音・有機溶剤・特定化学物質など、作業者の健康に影響を及ぼす可能性がある要因が存在します。こうしたリスクを見える化し、適切な改善につなげるために重要なのが作業環境測定です。本記事では、作業環境測定の目的や対象となる作業場、保全担当者が確認すべきポイントを解説します。

工場の安全管理に欠かせない作業環境測定

工場の安全管理では、機械設備の点検や作業手順の整備だけでなく、作業者が働く空間そのものの安全性を確認することが重要です。
研磨・切断・溶接・塗装・洗浄・化学物質の取り扱いなどを行う現場では、目に見えない粉じんや有害ガス、蒸気、騒音などが作業環境中に発生することがあります。

これらは短期間では異常に気づきにくい場合もありますが、長期間では、呼吸器疾患、聴力低下、中毒症状、皮膚障害などの健康障害につながるおそれがあります。そのため、作業環境を数値で把握し、必要に応じて設備改善や作業方法の見直しを行うことが重要です。

作業環境測定とは

作業環境測定とは、作業場に存在する有害要因の濃度やレベルを測定し、作業環境が適切に管理されているかを確認するための取り組みです。対象となる有害要因には、粉じん、化学物質、有機溶剤、鉛、騒音、放射線などがあります。

単に空気中の濃度や騒音レベルを測るだけでなく、測定計画の作成、測定点の設定、サンプリング、分析、評価、記録の保存までが一連の流れとなります。作業環境測定基準では、単位作業場所や測定点の考え方などが定められており、作業者の行動範囲や有害物の分布状況を踏まえて測定することが求められます。

作業環境測定を行う目的

以下に作業環境測定を行う目的について具体的に説明いたします。

作業者の健康障害を防止するため

作業環境測定の目的に一つは、作業者の健康障害を未然に防ぐことです。工場では、作業内容によって粉じんや化学物質の蒸気、金属ヒューム、騒音などが発生します。こういった環境や物質は発生源の近くにいる作業者だけでなく、気流や設備配置によって周辺作業者にも影響を与える可能性があります。

測定によって有害要因の濃度やレベルを把握できれば、健康障害が発生する前にリスクを発見できます。たとえば、粉じん濃度が高い場合は集じん設備の能力不足や清掃方法の問題が考えられます。騒音レベルが高い場合は、防音カバーの設置や設備のメンテナンス、作業時間の調整などが必要になることもあります。

法令遵守のため

作業環境測定は、労働安全衛生法に基づく重要な義務の一つです。厚生労働省は、政令で指定された作業場では定期的に作業環境測定を行う必要があると示しています。 測定の対象や頻度、記録の保存期間などは、粉じん障害防止規則、有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、鉛中毒予防規則など、関係する規則によって異なります。

そのため、工場では「測定が必要かどうか」だけでなく、「どの物質・作業場が対象か」「測定頻度は適切か」「記録は保存されているか」まで確認することが重要です。

設備改善・作業環境改善の判断材料にするため

作業環境測定は、設備改善や作業環境改善を進めるための客観的な判断材料にもなります。現場では「においが強い」「粉じんが多い気がする」「機械音が大きい」といった感覚的な意見が出ることがありますが、改善の優先順位を決めるには数値による確認が欠かせません。

測定結果があれば、局所排気装置の風量不足、集じん機のフィルター劣化、換気経路の不備、設備の老朽化、作業手順の問題などを具体的に検討できます。また、改善前後の測定結果を比較することで、対策の効果を確認できます。

作業環境測定を行う主な場所

粉じんを著しく発散させる屋内作業場

粉じんを著しく発散させる屋内作業場は、作業環境測定の対象となる代表的な場所です。たとえば、金属や鉱物の研磨、切断、粉砕、混合、袋詰めなどの工程では、空気中に粉じんが舞いやすくなります。

粉じんは吸い込むことで呼吸器に影響を与えるおそれがあり、発生源対策や換気、集じん設備の管理が重要です。特に、集じん機のフィルター詰まりやダクトの破損、フード位置のずれなどがあると、測定結果が悪化する可能性があります。

著しい騒音を発する屋内作業場

プレス機、コンプレッサー、破砕機、切断機、送風機などを使用する工場では、著しい騒音が発生する場合があります。騒音は、作業者の聴力低下だけでなく、集中力の低下やコミュニケーション不足による事故リスクにも関係します。

騒音対策では、発生源の低騒音化、防音カバーの設置、吸音材の活用、設備の保全、耳栓・イヤーマフなどの保護具の使用が検討されます。騒音については、設備や作業工程、作業方法を変更した場合にも測定が重要です。

坑内の作業場

坑内の作業場では、換気が不十分になりやすく、粉じんや有害ガス、酸素濃度の低下などに注意が必要です。閉鎖的な空間では、有害要因が滞留しやすく、地上の作業場とは異なるリスク管理が求められます。

そのため、換気設備の状態、空気の流れ、作業者の滞在時間、緊急時の退避経路なども含めて確認することが大切です。測定結果だけでなく、日常点検や設備保全の記録とあわせて管理することで、より実効性のある安全対策につながります。

放射線業務を行う作業場

放射線業務を行う作業場では、放射線量や汚染の管理が重要です。医療機器、研究施設、非破壊検査、放射性物質を扱う工程などでは、作業者が放射線にばく露する可能性があります。

放射線は目に見えないため、管理区域の設定、線量測定、遮へい、作業時間の管理、教育訓練などを組み合わせて対策を行う必要があります。

一定の鉛作業を行う屋内作業場

鉛を取り扱う作業場では、鉛粉じんやヒュームへのばく露に注意が必要です。鉛は体内に蓄積することで健康障害を引き起こすおそれがあるため、作業環境測定とあわせて、作業者の健康診断や衛生管理も重要になります。

鉛を含む材料の溶解、鋳造、研磨、はんだ作業、塗膜の除去などを行う場合は、作業内容や使用材料を確認し、対象作業に該当するかを把握する必要があります。

保全担当者が確認すべきポイント

作業環境測定を有効に活用するには、測定を安全衛生部門だけの業務と捉えず、保全担当者も現場改善の視点で関わることが重要です。まず確認したいのは、測定対象となる作業場や設備を正しく把握できているかです。新しい設備の導入、材料変更、工程変更、レイアウト変更があると、測定対象やリスクが変わることがあります。

次に、局所排気装置、集じん機、送風機、換気扇、ダクト、フィルター、防音カバーなどの状態を定期的に点検することが大切です。これらの設備は、導入時に性能を満たしていても、経年劣化や詰まり、破損、調整不良によって効果が低下します。作業環境測定の結果が悪化した場合、保全記録と照らし合わせることで原因を特定しやすくなります。

また、測定時の作業条件を確認することも重要です。通常より生産量が少ない日や、対象設備が稼働していない時間帯に測定すると、実態を正しく反映できない可能性があります。作業者が通常どおり作業している状態で測定できるよう、測定機関や安全衛生担当者と事前に情報共有することが重要です。

まとめ

今回は、工場内の作業環境測定の目的や対象となる作業場、実施時に保全担当者が確認すべきポイントについてご紹介しました。

株式会社藤浪では、工場設備の保全・点検・作業環境改善に関する豊富な実績があり、現場の状況に応じた安全対策や設備改善のご提案が可能です。粉じん、騒音、化学物質などの作業環境に課題を感じている場合は、早めの確認と対策が重要です。工場内の作業環境や設備保全でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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