溶接は、建設や製造業など多くの産業で不可欠な作業です。しかし、その過程で発生する溶接ヒュームは、作業者の健康に多大なリスクをもたらす可能性があります。この記事では、溶接ヒュームが人体に及ぼす影響と、それを最小限に抑えるための対策について解説します。

溶接ヒュームとは何か?

溶接ヒュームは、溶接作業中に金属が高温に加熱されることで発生する煙です。この煙には、金属粒子や酸化物などの微細な固体物質が含まれており、空気中に拡散します。アーク溶接、ガス溶接、レーザー溶接、プラズマ溶接など、さまざまな溶接方法がありますが、これらの方法で溶接ヒュームが発生する可能性があります。

溶接ヒュームの健康への影響

溶接ヒュームには、人体に有害な物質が含まれており、それらが体内に入ることで様々な健康問題を引き起こす可能性があります。

呼吸器系への影響:

長期間にわたって溶接ヒュームを吸入すると、呼吸器系に損傷を与え、慢性的な呼吸疾患や肺がんのリスクを高める可能性があります。

皮膚への影響:

溶接ヒュームに含まれる物質には皮膚刺激性があり、湿疹や皮膚炎を引き起こすことがあります。
眼への影響: 煙が目に入ると、結膜炎や白内障を引き起こす可能性があります。また、溶接中の強い光は眼球にダメージを与えることがあります。

筋骨格系への影響:

長時間の立ち作業や同じ姿勢を続けることは、足腰への負担を増大させる可能性があります。

効果的な溶接ヒューム対策

これらの健康リスクを軽減するためには、以下のような対策が効果的です。

ヒュームコレクターの導入:

溶接煙を効果的に捕集し、作業環境から除去します。

個人用防護具の着用:

マスクやゴーグル、エプロンなどを使用し、有害物質の直接的な接触を防ぎます。

換気設備の導入:

適切な換気によって、作業場の空気を清浄に保ち、有害物質の濃度を低下させます。

溶接ヒュームの具体的な対策を紹介

最近の法規制の変更により、「溶接ヒューム」が特定化学物質(第2類物質)に指定され、溶接作業を行う事業所においては、改正特定化学物質障害予防規則に従ったばく露防止措置の実施が義務付けられました。これに対応するための具体的な措置について、多くの事業者が悩んでいることでしょう。ここでは、必要となる主な防止措置を解説します。

全体換気の実施:

溶接作業場における溶接ヒュームの濃度を効果的に減少させるため、全体換気装置の導入が求められます。また、プッシュプル型換気装置や局所排気装置の使用も、ヒューム濃度を管理する上で有効な手段となります。

溶接ヒューム濃度の測定と適切なマスクの使用:

2022年4月1日からの新規則では、空気中の溶接ヒューム濃度を定期的に測定し、その濃度に応じた防護性能を持つマスクの使用が求められます。従来の一律の要件ではなく、作業環境に応じた適切なマスク選びが重要となります。特に屋内作業場での継続的な作業では、粒子捕集効率95.0%以上のマスクの選定が基本となります。

フィットテストの実施:

2023年4月1日からは、面体形のマスクを使用する際に、そのフィットを確認するテストが義務付けられます。このフィットテストは、「定量的フィットテスト」または「定性的フィットテスト」のいずれかにより行われ、1年に1回の実施が必要とされます。また、テスト結果は3年間保存しなければなりません。

まとめ

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